2022年2月10日木曜日

鍵盤グラスハープ (3) 演奏, 収録

演奏

最終的な微調整は特に語ることのない地道な作業ですが、わりと手間がかかっています。グラス毎のアームの位置、鍵盤を叩く強さに応じた波形調整、音量を揃える調整などです。グラスごとに音量が違うのでなるべく揃うように調整していますが、いまだにうまくいきません。

演奏前はグラスごとに水量を調整して音程をチューニングします。対応する周波数で加振しながら水を加えていくと、ちょうど良い量になったとき音が大きくなって水面が波立つので意外と簡単です。


完成後は期待以上に普通の楽器らしく演奏できて楽しめました。2オクターブの制約がありますが、音域の拡張を考えるより今の範囲で収まる形のアレンジを考えたり、ピアノと多重奏するなどの使い方を模索しています。

収録と照明

どんなものになるか分からなかったので当初動画作りは計画していませんでしたが、わりと楽器らしくなって面白かったので動画を公開しました。

撮影のため照明による演出も最後に追加することにしました。以前このページでも度々紹介しているピアノプロジェクションシステムの流用で、久しぶりに一式を引っ張り出して設置しました。
グラスハープだけでも邪魔なのにプロジェクタも加わって、生活空間がだいぶ浸食されています。

楽器としては内蔵マイコンで完結していましたが、これのために PC を一台挟む形にしています。グラスにあてる照明としての利用だけなのでデザインは単純で、即席の Web app で作っています。

楽器の音量が小さいので、収録のときは鍵盤を叩く音とプロジェクタの冷却ファンの音が気になりました。結局一旦演奏パターンを MIDI 録音して音の収録は別撮りしています。

MIDI を再生できるので、オルゴール的に演奏させたりもできます。

もはや自分用の記録を長々と書きました。
追加したサンプル演奏動画は過去最低の再生数を叩き出してマニア向けになった模様ですが、このまま自分好みのものを作りたいです。

ニコニコに寄せられたコメントで笑った "人知れず死んだ博士の研究室でホコリ被ってそう" はわりとリアルな気もしてきました。

2022年1月30日日曜日

鍵盤グラスハープ (2) グラス, 音作り

グラス

マイコンやソフトの準備と並行して、キーパーツのグラス収集を始めていました。200~2000円くらいのものまで様々です。

最初は数量少な目で様子見して、だんだん数を増します。欲しい周波数と音色のグラスに当たるまで延々グラスを買い続ける熱いグラスガチャ(割れた音みたいだ)が続きました。店でグラスを見かけると周波数や音色を想像するようになります。

本物のグラスハープでは演奏のためグラスの高さをなるべく揃えるそうですが、この製作ではその制約がないので自由に買い集めました。最終的な配置も、コーラス隊をイメージして段差をつける形にしてみました。


振動スピーカーは最初に数個買って試したあと、安かった AliExpress でまとめ買い。届くまで 1ヶ月くらいかかったので開発ペースはゆっくりです。

グラスにスピーカーを取り付ける構造は当初からわりと悩みました。レーザーカッターでアクリル加工し、ある程度の圧で振動スピーカーをグラスに押し付けられるアームを作りました。外観も良い感じにしたかったのでネジやゴムも透明なものを使いましたが、結局配線材は赤黒で妥協して台無しにした感もあります。


音作り

まず楽器として、打鍵からグラスを鳴らすまでの遅延の最適化にこだわっています。
実際 MIDI 受信やマイコン間通信による遅延はほとんど問題なく、リアルタイム波形生成のためのソフト設計やサウンドデバイスのバッファサイズ縮小のあたりが効きました。初期は 100[ms] 程度の遅延があってまともに演奏できませんでしたが、最終的には…正確に計測していませんが違和感なく弾けます。

音色を改善しようと指演奏の波形を周波数解析して似た波形をぶつけることを試行錯誤しましたが、期待したほど改善が見られなかったので結局今はほぼ正弦波のまま使用しています。本物のグラスハープとは違いますが、まあ楽しめる程度のアナログ的な音になってきました。

また、ピアノ音のようなアタックと減衰が欲しかったので、そのあたりの波形を作りこみました。減衰率などは曲に合わせて調整できるようにしています。


マイコン x 6, グラスと振動スピーカー x 25+予備 を大購入し、机の上に嫌がらせのように並んだあたりからはもう後には退けない状態になっていました。その後も追加で必要になったパーツを次々買い足しながら突き進み、投資やギャンブルで破滅に向かうようなモードです。

初期の試作

演奏と収録についても書こうと思うので、もう少しだけ続きます。

(3) 演奏、収録

2022年1月25日火曜日

鍵盤グラスハープ (1) 構想, システム

大きな工作をしたので、ほぼ廃墟化していたこの blog も一年半ぶりに更新です。


鍵盤で演奏するグラスハープ(もどき)です。個人の工作では過去一で手間がかかったと思います。

構想

ピアノ鍵盤で別のアナログ楽器を弾くことを考えたのは10年くらい前でしたが、良いネタがなかったので他愛ない思いつきのまま眠らせていました。昨年なんとなくそれを思いだしていて、グラスハープは初心者が安定して音を鳴らすのが難しい、早いフレーズや和音が難しいなど、鍵盤化のメリットがありそうだったので向いている気がしました。単純な構造で鳴らせそうな可能性を感じられたのもきっかけで、構想が始まりました。

とは言え大規模な工作なので本気で踏み切るのはだいぶ先です。材料大購入して後悔する様子が目に浮かぶので、まず単音を弾く系の実現性検証が延々続きます。

動画の 00:30 付近に、振動スピーカーでピアノ音を与えてみても全然駄目だったというくだりがありますが、実時間ではそこで一旦諦めて4ヶ月ほど活動が止まっています。その頃はしばらく本業にうつつを抜かしていましたが、その後少し業務が落ち着いたので手法を変えて試しつつ再開しました。

楽器として遊ぶために譲れないのは、音色、音域、応答性。楽器としてわりと譲りたくないのが外観。というスタンスでした。
逆に運用性や製作費は譲りすぎて後悔している気がしなくもありません。最終的に普段使っている電子ピアノより高価な楽器になったとか。あと、地震が来たら終わりです。


でもわりと狂っていて好きです。

システム

音が混ざらないように出力を分けるためと、リアルタイム波形生成の負荷分散のために複数マイコンを前提に考え、とりあえず家にあった Raspberry pi 3B を使って試作を始めてみました。

2オクターブ25音を目指していたので、オーディオ 25ch をカバーするためにマイコンも25個、…はさすがに思いとどまり、オクターブ違いの出力は共用にしています。
1マイコンあたりステレオ 2出力で、12種類の音階をカバーするため、マイコンは全部で 6個使っています。

本格製作を決め、いざマイコンを追加購入しようとしたら、コロナの影響で Raspberry pi が全く手に入らない想定外の事態でモチベーション的に危機を迎えます。
結局メルカリで買い集め、鍵盤グラスハープ基幹部の大部分は中古品で構成されています。

また、出力を上げるために安いアンプ基板のモジュールを量産しました。回路系の知識はまるっきりですが、なるべくシンプルな形で地道に作ってなんとかごまかしています。
一枚作ってみたらうまく行きそうでしたが、量産して USB 充電器でまとめて給電したらノイズが荒れまくりで、充電器をバラにしたら静まってくれました。このあたりも素人感全開で勉強になります。

マイコン × 3 とアンプ × 3 のモジュールです。これを2セット作成。制作中、徐々に出せる音階が増えていくのが楽しかったです。

制御システム全容。マイコン間の通信を安定させるため接続は有線にし、ケーブル類が溢れました。内部に HUB など丸々格納している変態楽器です。


(まだまだ続きそうなのでまた次回)

鍵盤グラスハープ (2)